無色のクレパス


お題サイト「Mercy Killing」様よりお借りしました。


 昼休み。私は久しぶりに屋上で弁当を食べようと階段を上っていたのだが、ふと気付いた。どうやら、先客がいるらしいと。
 カップルだったり、運動部の掃きだめになっていれば大人しく帰ろうと屋上を覗き込む。いたのは男子生徒3人だった。もちろん、校内全ての人間の顔と名前を覚えているのでそれが誰だかすぐに分かった。

「雄哉先輩ー、俺、今日焼きそばパン食べたかったんですよ。そしたら、毎週木曜は売ってねぇって言って、無かったんすよありえなくないですか」
「ありえなくねぇよ」

 3人いるうち2人が3年で、もう一人は2年だ。2年の彼の名前は石井成一。5組の生徒で、うちの学校で有名な不良である。そして、その隣で弁当を食べているのが興田雄哉。言わずともがな番長である。
 さらに――

「ねぇ。何で石井は焼きそばパンに拘るの?」
「え?何で、って・・・美味いじゃないですか、焼きそばパン」
「購買で売ってるパンなんて全部同じ味じゃない?」

 河野幸生。涼しげなマスクのイケメン生徒だが、彼の黒い噂は絶えない。
 以上の3名から、何の集まりなのかすぐに分かった。彼等は番長、興田雄哉を中心に活躍している校内の不良達である。
 あーあー、と石井くんが溜息を漏らす。

「俺最近何だか毎日マンネリしてるんですよねー。番長、喧嘩行きませんか?最近、街おりてないでしょ」
「俺は最近忙しいんだよ。何が楽しくて喧嘩しなきゃなんねーんだ」
「えっ!?それ、本末転倒って言うんですよ」

 じゃあこうしよう、と口を挟んだのは河野くんだった。このまま傍観するかに思えたが、話の行く末を眺めていただけなのだろう。

「今週は街行かないで、来週にしようよ。どうせ、近々行かなきゃいけないんだし」
「俺、今月カツカツなんでカツアゲ――」
「石井くん。声が大きいよ」

 何て奴等だ。街へショッピングにでも行くのかと思ったらカツアゲの相談してた。私は恐ろしくなって背を向ける。これ以上ここにいても、どのみち不良の話題は新聞に書けないのだから時間の無駄だ。
 そんな私の背中に、なおも続く不良ちっくな会話。
 ――やはり、喧嘩だの何だのという暴力的なそれには関わりたく無い。