03.周囲の糖度をあげないで下さい

 部活帰りの事だ。いつも通り帰り支度を済ませ、纏わり付いて来る後輩・宮路慎をいなしながら校門を抜ける。たまに赤羽美風が待っている事があるものの、今日は本当に慎と~代青葉の二人だけだった。

「どうしてお前は今日、僕の所に居るんだい、慎」
「え?あぁ、本当は草薙先輩も連れて三人で帰ろうと思ってたんですけど、先輩がどっか行きました」
「・・・成る程。目の前を見てみるといいよ。すぐに答えが分かる」
「え?」

 角を曲がった瞬間、視界に入るのはまさに会話の人物である草薙人志とそのカノジョ、檜垣玲璃の姿があった。何やら2人で談笑しながら歩いている。

「部活終わるの遅い・・・やっぱり私、先に帰ってていい?待っとくのシンドイ」
「はぁ?だから、前から言ってっけどよ、マネージャーなりゃいいだろ。暇も潰れる上、四六時中俺と一緒だぜ?」
「何でドヤ顔してんのかまるで理解出来ないけど、常に一緒行動も何だかなぁ。あんた私を何だと思ってるのさ・・・。無い無い。それは無い」

 不敵な笑みを浮かべて提案する人志だったが、それを玲璃がバッサリと斬り捨てる。彼女はなかなかにストイックな所があるので彼が言うようなシチュエーションは好まないのだろう。
 しかし隣で呻っていた慎が口を開いた。

「よく分からないんですよね、檜垣先輩が考えてる事って。俺の・・・あー・・・何だろ、友達?も言ってました」
「友達?って何だ。あれか、同じクラスの神埼悠那か」
「え?あぁそうですけど。あいつ、先輩と同じ家研部なんです。でも、何考えてんのかよく分からないって。あと乙女モード無双とか訳の分からない事言ってますね」

 ――乙女モード無双・・・?
 そもそも会話が成り立たない慎の言葉を無視、再び前を歩く2人に視線を戻す。こうやって人志が玲璃と帰るのは珍しい事ではないが、やはり7時過ぎまで待つのは疲れるらしく毎日というわけではない。その証拠に、昨日は今の2人に人志を加えた3人で帰り、アイスを買った記憶がある。

「マネージャーって言ったら女の戦場じゃん。嫌だなぁ、そういう所。あまり良い思い出が無いわ」
「・・・あぁ、そういえばお前・・・」
「大変だったよ、上履きと靴箱の床がご結婚なさってた時とか涙目になったよ本当。挙げ句の果てには昨日まで友達だった子にまでフラれるし」
「あー・・・いや、悪ぃ」

 当然だ。少々性格に難があるものの、およそ運動部の代表組と称される人間と付き合うのだ。イジメ、それに準ずる何かがあるのを覚悟するのは最早義務。
 空気が重くなって来たのだが、加害者の1人である人志がその空気をブレイクするように笑った。

「でもまぁ、心配すんな!」
「何がそんなに自信満々なのか私には分からないよ」
「何でだ。俺がいるだろ」
「・・・・」

 隣を歩いていた慎が「今日はブラックコーヒーの日にしましょう」と言い出したので近くの喫茶店へと入った。正直、目の前の馬鹿共を見るのは目に良くなかった。