汲み上げ式火山

お題配布サイト『Mercy Killing』様よりお借りしました


 その日、高以良には古小路山査子が来ていた。特に理由は無いらしく、ただの単なる暇つぶしらしいが生憎と補佐たる篠塚芥菜はそんな表面的な理由を信じる程お人よしではない。何やら彼と密約を交わしていた小宮山樒は執務室に引き籠っている。昨日から遊びほうけて書簡が溜まっているので客人の相手をさせないようにしたのだ。
 山査子もまた彼女に用事があったわけではないらしく、柏桔梗と一言二言会話したと思えばふらふらと城内を歩き回っている姿を目撃した。

「あの人は何をうろうろと・・・」

 城内を勝手に歩かれては困る、と芥菜は方向転換して他領主の行動を制限しようと決意したときだった。
 何の前触れも無く、ふらりと的場実栗が現れた。
 彼も頭が切れる人間だったが、この事態は完全に計算外だったらしく、少し驚いた顔をしている。山査子はというと腹の読めない謎めいた笑みを浮かべたままだ。

「あの取り合わせは・・・」

 ――胃がキリキリと痛むのを感じた。
 彼等の相性はあまりよろしくなかったような気がする。というか、よくない。城に火を着けられたりする前に引き剥がしたいが――

「おやおや。随分と暇な事ですねぇ、領主殿。僕もその世の中を嘗め切ったような余裕が欲しいものですよ」
「いや、君程じゃないさ。俺だってそれなりに苦労して今ここにいるわけだからね。昼間から暇な領主に構っている君程暇じゃあないよ」

 ああ、いけない。
 慌てて芥菜は両者の睨み合いに割って入った。