別腹の愛


お題サイト「Mercy Killing」様よりお借りしました。


 廊下を通り、中庭へ行こうとしていた樒はふと足を止めた。何やらまさに行こうとしていた中庭の方から声が聞こえる。何事だと思って覗いてみれば、屈んでいる芥菜の背中が見えた。
 この位置からでは何をしているのかよく見えない、そう思って反対側へ回ってみる。

「うわっ・・・何の儀式だろ、あれ・・・」

 焚き火を囲んでいる。しかも芥菜は一人じゃなかった。彼の影になって見えなかったが、実栗もいたのだ。彼は彼は芥菜と同じように屈み、火を眺めている。
 にやにやと笑う芥菜に何事かぶつぶつと呟く実栗。
 誰か嫌な相手でも呪っているとしか思えない惨状に、樒は背筋が凍る思いをした。関わりたくないなあ、と思いながらもその焚き火を囲む輪にそれとなく加わってみる。

「おや、樒殿。貴方も火が好きなのですか?火はいいですよね、火は。良い事も悪い事も全てまとめて灰にしてくれますからね。僕は火が大好きです」
「放火魔みたいな事言わないでよ・・・。それで、芥菜は何をにやにや笑ってるの?」
「物が燃える様、というのは美しいものだと思ったのですよ」

 ――あかん、こいつ等。
 何かの宗教団めいた事を言い出す仲間達に、若干の寒気を覚えつつ静かにその場から離れる。何であの人達はあんなに火に魅入られているのだろうか・・・。