04.呆れるくらいどうしようもなく仲がいい友人、親公認

 部活が終わり、先輩達を誘って校門を出た所で見覚えのある人影を見つけ、宮路慎は足を止めた。まだ秋口とはいえ冷えており、半袖の彼女が少しだけ寒そうに見えたが自分も変わりない格好をしていたのだと思い直す。
 いきなり立ち止まったので驚いた先輩――草薙人志が首を傾げた。

「おい、どうした?」
「あぁ・・・いや、何でも――」
「彼女は神埼悠那さんだろう?檜垣さんの後輩の」
「へぇ。お前の情報網には驚かされるわ」
「いいや。これは、美風の情報だ」

 勝手に繰り広げられる先輩達の会話を頭の片隅で聞きながら、ぼんやりと校門の前に立っている悠那を改めて見やる。誰か待っているのだろうか。
 ――特に何とも思わずそう見ていたら、横でにやにやと嗤う人志と目が合った。

「先に帰っててやろうか?一緒に帰れよ、アイツと」
「え?いやいいですよ別に。先輩が想像しているのと違いますから」
「そう言うなって。なぁ、青葉」
「そうだね。というか、友達を待つような時間じゃ無いだろう。送って行ってあげればいいんじゃないのかな」

 そう言って歩くペースを上げた先輩達は早々に角を曲がって視界から消えた。普段は啀み合っているくせに、こういう時にだけ謎のチームワークを発揮する。何だ仲良しか。
 急ぎ足で去って行く上学年達を茫然と見送った悠那が不意にこちらを向いた。
 その瞳が大きく見開かれる。

「あぁっ!慎くん!!」
「あ、あぁ。何だい!?」

 声が上擦った。
 先輩達が変な事を言うから、何となく意識してしまって。いや、薄暗かったのもいけなかった。悠那の馬鹿面がよく見えない。
 ぱっ、と走り寄ってきた彼女はいつも通りの高いテンションで捲し立てる。

「待ってたんですよ、慎くん」
「え!?いや・・・えっ!?ちょ、ちょっと待ってくれないか!」
「・・・どうしたんですか」

 あまりの挙動不審に露出狂でも見る様な目で見られ、頭が冷えていく。本当にどうしたんだ自分。

「よし、いいぞ!何の用事だい!?」
「・・・慎くんのお母様に、醤油と油とその他鍋に入れる具を買って来いと言われたんですよぅ。で、さすがに重くて持てないしそもそも伝えろっておばさんに頼まれてたんで、ついでに一緒に買い出し行きましょうって話です」
「・・・ダヨネー」
「何を驚いているか知りませんが、私も夕食一緒に食べるんで。ほら、行きますよ」
「・・・うん」