第1話

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 ズダンッ、と部屋全体が揺れた。何の事は無い、セドリックが重厚な机を少し叩いただけだ。

「今回は私が行くッ!」
「いやいや、落ち着けって。どんな仕事だったんだよ。あんたが出なきゃいけない程か?」
「新入りにいきなり仕事なんてさせられないだろう」
「いやコイツ、前の職場で1年半過ごしてるから。仕事に関しては新人じゃないから」

 どうどう、とジェラルドが上手い事署長を再び座らせる。
 今回ばかりは先輩の意見に賛成だ。何せ、ルシアは自身の仕事を『戦闘』というジャンルでアピールしている。であれば、彼女を仕事に連れて行かないのはある種の侮辱に他ならない。

「だが――ルシア。君も今来たばかりで疲れているだろう。私に新人の面倒を見る、ジェラルドのような器量はない。適材適所。この仕事は私がやるべきだ」
「あっ。私は汽車の中で5時間も寝てきたので、特に疲れたりはしてないです。はい」

 一瞬の静寂。
 いや、彼女の言う事はもっともなんだけど、もっとこう――オブラートで三重くらい包んだ言い方をして欲しかった。署長のオロオロした顔を見て心底そう思う。

「・・・はーい、仕切り直しな。で、仕事の内容はよ。それで俺が行くか、あんたが行くか決めようぜ。署長」

 どちらかと言うとセドリックとルシアの会話にはらはらさせられて、精神的に疲れを滲ませている先輩は最早色々とやけくそだった。いいからどうするのか決めてくれ、そんな悲壮感が漂っている。

「僕も勿論、先輩が受ける仕事なら同行しますよね。セドリックさん」
「そうだが・・・ルシアは・・・」
「仕事の!内容は!何なんだよ!お前も余計な事言うな、ブレット!」

 業を煮やしたジェラルドが吠える。ごほん、と一つ咳払いをした署長は自らを落ち着かせるように深く椅子に掛け直した。