1話 戦うためのアイテム

01.友達との再会


 本当に久々にコゼットギルドへと戻って来た。相も変わらず佇む変人達が集うギルドは、今日も今日とて人で大賑わいだ。そんな活気のある様子を、目を細めて見つめたメイヴィスは隣に立つ護衛・アロイスに声を掛けた。

「本当に久しぶりに帰って来た気がしますね」
「ああ。……だが、残念な事に俺は一時ギルドを外す事になるな。久々にクエストへ行けないのは気掛かりだが」
「そういえば、何か用事があるって言ってましたね」

 ああ、とアロイスは少しばかり面倒臭そうに目を眇める。彼の面倒臭いという感情は少しばかり珍しい気がした。何せ、錬金術師の武者修行に自ら護衛として名乗り出てくれる優しさを持つ彼だ。そんな半分は優しさで出来ている彼が、面倒臭いという感情を表に出すのが既に違和感である。

「すぐに戻る、とは約束出来ないが3日以内には戻る予定だ。メヴィ、すまないが適当に時間を潰していてくれ。俺の事は気にしなくて良い」
「あ、いやいや、別に焦らずアロイスさんが好きなようにして下さって大丈夫ですよ。ヴァレンディアでの仕事はもう終わってますし、外出の予定もありませんから!」
「……悪いな」

 苦虫を噛み潰したような顔をした騎士サマは謝罪を繰り返すばかりだ。特に、こちらの予定に合わせて貰う必要は無いのだが律儀な事だ。

「いつもは私の方が予定に付き合わせちゃってますし、全然気にしないで下さいね。私もたまにはクエストに行って珍しい素材でも収拾しておきますから。何か凄い物を作ったらアロイスさんにも紹介しますよ!」
「そうか。楽しみにしている」

 そう言って、ようやくアロイスはいつもの優しげな微笑を浮かべる。
 それを見ながら、ギルドの前でアロイスと分かれた。さて、彼が不在の間は何をしよう。ギルドへ帰って来たので、ある程度何でも自由に出来る状況だ。

 ***

 何をしよう何をしようと考えていたが、ギルド内部へ入ってしまえば案外あっさりしたい事が決まった。いつも通り、誰かを誘ってクエストへ行こう。それが本来のギルドの有り様だ。
 そうと決まればクエストメンバーを募らなければならない。知り合いがいる可能性に賭けて、メイヴィスはロビーへと足を向けた。ここに誰もいなければどうしようも無いのでショッピングにでも行くしか無いだろう。

 しかし蓋を開けてみれば、メイヴィスが知り合いを見つけるよりも先にその知り合い達の方が久方ぶりに帰還したメイヴィスの姿を見つけた。

「メヴィ! いつの間に帰って来てたのかなっ!?」

 猫被った親友の声に顔を上げれば大きなテーブルの1つを占領して見知った人物達が深刻そうな顔をしていた。取り繕った声を上げたナターリアでさえ、かなり深刻な表情をしている。何かあったのだろうか。
 光に吸い寄せられる虫が如く、メイヴィスは知り合い達がひしめき合う卓へと歩を進めた。彼女等は大騒ぎしていたのだろうか、他のギルドメンバーに遠巻きにされているのが伺える。

「わー、皆さんお久しぶりです」

 再会の言葉を口にしながらも、周囲を見回す。
 ナターリアの他に女性騎士のヒルデガルト、鍛冶見習いのシノ、その恋人でありファッションデザイナーだったグレアムというどことなく珍しい面子が雁首揃えている。奇特な組み合わせだ。

 こちらが聞くまでもなく、ナターリアが勝手に現状の説明を始める。彼女は割とサバサバしている気質なので、動きが非常に合理的だ。

「それがさ、今日はゲストのグレアムに来て貰って、恋が長続きする秘訣を教わっているところなんだ! メヴィも一緒にどうかな!?」
「恋が長続きする秘訣? ナタ、彼氏と続かないもんね」
「あ?」

 失言だったが、事実なのでメイヴィスは肩を竦める。ここで、物事の訂正をしてきたのは相変わらず穏やかな笑みを浮かべるゲストのグレアムだった。

「あら、ナターリア。私達のこれは恋じゃなくてア・イよ!」
「ぶっちゃけどっちでもいいかなっ!」
「そういうところよ、ナターリア」

 ちら、とシノを見やる。彼女はグレアムの言葉を淡々と聞いているのみで、顔色に目立った変化は無い。彼の言動を諫めないあたり、それはそれで解釈して良いという事だろう。彼女はグレアムに寛容だ。
 思ったより変な話題で盛り上がっているな、と首を捻っていると、ぐっとナターリアが耳に顔を寄せてきた。そのまま内緒話でもするかのような声量で言葉を紡ぐ。

「メヴィ、アンタ、アロイスの事もあるんだからグレアムの有り難い教え、聞いて行きなさいよ」
「ええ? いやでも、私とアロイスさんはそういう関係じゃ……」

 否定を試みるも、半ば無理矢理ナターリアに席へ着かされた。獣人特有の馬鹿力に敵うはずもなく、お人形さんよろしく、椅子に座らされてしまう。
 あと、個人的に気になっているのがヒルデガルトの存在だ。ナターリアのように動機があるとも思えず、従ってここにいる理由が皆目見当も付かない。彼女も無理矢理、猫かぶりナターリアにつれてこられたのだろうか。