校内新聞に載せる情報を入手、取材し終え下校する。ここから人に会う事はほとんど無いので、気を抜いていたが――今日はつくづくツイている日だと実感した。
前方に並んで歩く人影。1人は校内の魔王こと
どちらも大物にして校内の重要人物。そして、~代くんが女子に囲まれていないのは至って珍しい。それでも赤羽さんがいるが――
「今日は静かだね。赤羽、お前何かしたの?」
「ふふん。当然。というか、お前の周り、女子多すぎるわ。どこのバーゲンセールだ」
「ふぅん。まぁでも僕もそう思うよ」
~代くんはそのルックスと頭の良さ、そしてスポーツも出来るというまさに女子の理想を体現したような人物だ。よって、休み時間も帰りも恋する乙女達に取り囲まれている事になる。
しかし――何度も言うようだが、今彼の周りにいるのは赤羽さんだけ。彼女が如何に権力者であろうと乙女達を退けるのにはまだ役不足じゃなかろうか。
「種明かしはしないのかな?」
「今の状況の?知らない方が良いこともあると思うぞ、私は」
だけどそれも一理ある、そう言って赤羽さんが微かに嗤った。釣られて、隣に立つ~代くんも嗤った。あの二人の周りだけ極寒だ。
「いや、何か小魚の群れみたいなのがお前を捜し回っていたから、ちょっと一言声を掛けたら群れが自主解散した」
「・・・うん。ちょっと僕には意味が分からないかな。まぁいいや、そういう事もあるんだと思っておく事にしよう。根性のない子はゴメンだしね」
――さっきからずっと疑問なのだが、彼等は付き合っているのだろうか。
新聞部の情報網を以てしても、彼等の情報を探し出す事が出来ない。知恵比べでは勝てないのだから当然なのだが。
影が薄くて良かったと心底安堵しながら、まだまだ明るい5時の街並みを見る。
そして呆然と立ち止まった。
――さっきまでそこを歩いていた二人が、いない。
「巻かれた・・・」
***
家へ帰り、パソコンを開いて掲示板をチェック。某ちゃんねるの真似をして作られたこの掲示板、にしちゃんねる。新聞部が立ち上げた掲示板なのだが、校内の人間しか入る事が出来ない。
24時間体勢で新聞部の誰かが必ず見張っている掲示板なのだが、その掲示板を見て私は冷や汗を掻いた。それは最早、戦慄。
『103 名無に変わりまして陸上部がお送りします
やぁ、尾行は楽しかったかな?』
コテハンが付いている。だって本来ならば『名無に変わりまして西高生がお送りします』になっているはずだから。
――次からは気をつけよう。
そう心に決め、静かにノートパソコンを閉じた。