無事に6校時が終わり、六花は掃除を完全にサボって再び校舎裏に足を運んでいた。もちろん、荒れ放題のそこは掃除する生徒の影もない。
「・・・さて。お前の不用意な発言で俺が厄介事を担う羽目になった話だが」
「ごめんんん!それについては本ッ当に悪かったと思ってるよ!」
引き攣った笑みを浮かべる大天使もとい大悪魔様に背筋が総毛立つ。人を13人は殺してそうな絶対零度の表情に謝り倒す以外の対処法が無かった。
というのも、先程の昼休み。何故か有真達に絡まれていたルシフェルだったのだが、視えるか否かと訊かれて『視えない』という旨の答えを用意したのだが、それがいけなかったらしい。話の流れなど知るわけないので仕方が無いと言えばそれまでだが。
「それにしても、あの二人本当に視えてるんだね」
「言っただろう。そもそも、アイツ等は混血だ。薄過ぎて何の人外のかは知らないが」
「えぇ・・・あんた、言う程強くないでしょ。実は」
「そんなわけないだろうが。昼間薄くなる種族は決まっているからな。恐らく、そこら辺を洗えば分かるだろうが、生憎と俺はあんな餓鬼共に興味も関心も無い。知りたいのなら自分で調べる事だな」
――不機嫌だなぁ・・・。
これは機嫌が回復するまで放置するしかないかもしれない。しかし、何と言っても今日はやることがたくさんあるのだ。ヘソを曲げられても困る。
「で、先輩の件だけど。今のところは何も起こってないよ」
「そうか。で、何でお前はここにいるんだ?」
「今は本当なら掃除の時間だからね。他学年に行く余裕は無かったりする」
そうか、とルシフェルが呟いたところでケータイが震えた。メールの受信を知らせている事に気付き、スマートフォンの画面に視線を落とす。
送信者は巴だった。
『大変ですっ!今、2年生の教室でまた喧嘩騒ぎが起きたって!倉田先輩からの情報なんで間違い無いと思いますッ!!』
――言ったそばからこれか・・・。
メールの中身を見ていないルシフェルは呑気なもので、どうした、だの暇だ、だのと文句を垂れている。
「行くよルシフェル!何か、やっと喧嘩騒動が起きたらしいから!」
「やっとって何だよ・・・。お前、その言い方だと喧嘩騒ぎを楽しんでいるように聞こえるぞ」
「・・・そうかもしれない」
「お前、たまに吃驚する程馬鹿だな」
「五月蝿い」
言って走り出せばのろのろと後ろからルシフェルが着いて来る。そういえば、どうして彼と有真達は話していたのだろう、と今更になってそれを考えた。