04.

 何事も無く午前の授業が終わり、その日恒例となりつつある首藤響弥の張り込みについた時だ。朝から姿をくらましたルシフェルが帰還したのは。

「お、やってるな」
「・・・あんたがしろって言ったんじゃん」

 廊下に人がいない事を確認し、常人には視えていないであろう彼に向かって愚痴を溢す。この場に一般人がいようものなら、宙に向かって譫言を呟く危ない人間にしか見えないだろう。
 昼休みでまだ弁当を食べている人間が多いとはいえ、ここは学校。それこそ山のように人がひしめき合っている魔窟だ。これ以降、ルシフェルが言う事は全て無視しようそうしよう。その方が絶対に平和だ。

「俺が居ない間、何かあったか?」
「・・・・」
「その様子じゃ無さそうだな」
「・・・・・・・」
「おい、無視するんじゃない。会話しろよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「なぁなぁなぁなぁ」

 それら全てを華麗にスルー。昼休みの為に早弁したとか、色々あってちょっと疲れているのも事実だったが、ぶっちゃけ鬱陶しい事この上無い。そろそろ黙って貰いたいものだ。

「・・・ってか、ルシフェルいるなら私が張り込みする必要無くない?」
「あるだろう。俺の姿は、他人に視えていないんだぞ」
「無いよ。というか、ちょっとトイレ。ちゃんと先輩の事見ててよ」
「お前な・・・まぁいい。すぐに戻って来いよ」
「ラジャ」

 響弥が見える位置を退き、トイレへ。その際、何の事情も知らないであろう有真、裟楠とすれ違ったが何やら深刻そうな顔をしていたので素通り。
 彼等は寮生なので、それ関連でああやって気難しい顔をしている事があるのだ。
 どいつもこいつも大変だな、とほとんど他人事のように思い、彼等の視線の先にルシフェルがいるなんてもちろん気付かなかった。