14.

 ――憑き物。
 実際、ルシフェルに出会うまで六花自身も悩まされ、対策を練る為に寺通い神社通いをした事もある厄介な怪異。
 響弥の症状はまさにそれと一致する。
 普段ならばしないような行動。覚えていない光景に対峙した相手ですら何も覚えていないらしい。
 彼と自分の違いは単純だ。何かが憑いていると気付いているかいないか。
 二重人格のような振る舞いをするのは憑いているから。
 しかし、憑き物の真意が分からない。六花は霊媒体質で色々乗っ取ると美味しい思いを出来るから寄って来る霊、妖怪類も多種多様だが響弥に憑く意味が分からない。愉快犯か?まあ、それも実にあり得る事だ。自分達とは違う次元に生きる存在のことなど、理解できるはずもない。
 或いは――分からないだけで、響弥も霊媒体質なのかもしれない。何の苦労もしてなさそうだな、とか思っていたが人を見かけで判断するのは愚かだ。
 結論――何だか放っておけない。

「その憑き・・・いや、何か訳の分からない現象が起き始めたのはいつ?」
「あ?アンタ、協力してくれるのか!?」
「いいから答えてよ」
「いつからだったかね・・・一ヶ月くらい前からか?」
「3件同じ事件が起きているらしいけど、全部同じような感じ?」
「おう!しかも全部同じパターンだぜ」

 本当に2年かこいつ、学習能力なさ過ぎるだろう。そう思ったが直接話とは関係無いので黙っておく。

「今日は、放課後暇?」
「はぁ?放課後?何でまた・・・」
「そういうのに詳しい人を知ってるから行こうよ」

 厳密に言えば人ではないが、彼――堕天使ルシフェルに尋ねれば何かしら分かるかもしれない。隣人両名はそこまで親しくないのでカウントしないとして、ある程度人の話を聞いてくれる管理人に物を相談するのも有りだろう。

「おう!悪ぃな、何か」
「・・・まぁ、ね。で、巴はどうする?」
「何かスクープの臭いがするんで行きます!」

 こうして、憑き物落とし調べが始まった。