「とりあえずよぅ、俺の話を聞け。お前等はどうせ暴力事件の噂しか知らねぇんだろ?なら、多分俺の話と食い違ってんだろうからな」
「どういう意味?」
何故か自信満々に言う響弥に疑問を隠せない。火のないところに煙とか立たないのだから、絶対彼が何かしら暴力及びそれに準ずる何かをしでかした事は確かなのだ。
――が、当人はそれを頑なに否定。食い違う主張と噂、まるでどこかの殺人事件のようじゃないか。
しかし、ここで唐突に彼の回想シーンへと移行することになる。
***
一週間くらい前の話。
その日は教室での授業中だった。とは言ってもほとんど自習のようなもので配られたプリントの問題を解くだけだったのだが、ともあれ教師もちゃんといたしやっている奴はやっている、寝ている奴は寝ているような状況だった。
もちろん、首藤響弥は連日夜更かしをしまくった挙げ句、自習などと言われたら当然の如く眠りの世界へ。教室を見回し、教師もさほど寝ている人間に感心が無いのを確認して机へ突っ伏そうとしたその時に、気付いたのだ。
後ろの席から何か変な物音のようなものが聞こえる事に。
席の主は男で特に仲が良いわけでもなく、つまりはほとんど互いに無関心のような関係だったのだが、響弥は基本的に知らない人間とも気軽に話せる質だったので何とはなしに後ろを向いた。
何か楽しい事をしているのならば交ぜて貰おうと思ったのだ。
「何やって・・・ん、だ・・・?ん?」
振り返って何とはなしにその人物がどことなく《変》だと思った。何がなのかは分からないが、とにかく変だと思った。根拠はない。敢えて説明するのならばそれは《勘》だ。
「何かよぉ、お前・・・変じゃねぇ?具合でも悪ぃのか?」
「・・・・」
「え?おいおい、マジかよ。ったく、熱中症だろ絶対。立てるか――」
肩を掴み、後ろの席に座る彼が顔を上げたその瞬間から――まったく記憶が無い。
***
「と、言うわけだ」
そう言って何故か誇らしげに胸を張る響弥に、六花は溜息を以て返した。