01.

「――これには、何の意味があるんだ」

 うんざりしたようにキリトは呟いた。月の青白い光が不気味にその光景を映し出しているのを見、さらに溜息を吐く。彼は一人ではなかった。

「意味・・・か。それは、今の君に講釈したところであまり意味があるとは思えないな」
「言葉遊びをしたいわけじゃないのだが」
「でも説明するとなると、結構長くなるから場所を変えた方が良い。殺人的な長さなんだよ」
「誰がこの状況と掛けろと言ったんだ・・・」

 調律師は再び溜息を吐いて足下を見た。
 血を流して倒れる男が一人。少し離れた所に数名の男女が倒れている。もちろん絶命しており、動かないただの屍だ。

「ああ。血生臭い。おい、帰るぞ。こんな所にいられるか」
「意外と純情だね、キリト。確かに、僕もずっとこんな所にいるわけにはいかないから君の意見には賛成だ」

 それにしても、とキリトは肩を竦めた。

「こんなのが革命軍の序列1位か。ついこの間、7位も欠番になっただろう?」
「彼等は《ローレライ》じゃないからね。それに、そろそろ邪魔だと思っていたんだ。どうせだから上手く利用するのも、悪く無い」

 そう言って微笑んだ彼に悪気は一切無く、まさか人を一人殺しているなどとは誰も思わない事だろう。ふん、と鼻を鳴らしたキリトは皮肉の一言を吐き出した。

「あまり変な遊びばかりするものじゃないですよ、王様」