03.

 城へ着けば一も二もなく、そのまま謁見の間へ通された。道中は廊下の脇に整列した兵士達の敬礼を受けつつ、非常に居心地の悪い思いをさせられたがこれが王城というものなのかもしれない。
 さてこの――謁見の間。赤いカーペット、石造りの壁、立て掛けられた調度品の数々。絢爛豪華、金と赤で出来ているだろうその部屋には部屋としては必要無い上座がある。
 そこだけ周りの床より数段だけ高く、入り口からの道はそこへ続く一本道だ。
 即ち、玉座。
 赤い金の椅子に腰掛けた『王様』が粛々とこちらを見ている。その顔は完全なる無表情だった。人を呼び付けておいてこの態度――不遜。一国を治める主なだけはある。
 不安に思い、隣の保護者であるディラスを見上げる。
 彼もまたやや緊張しているのか、その顔はとても険しかった。たんに居心地が悪いだけかもしれないが。

「《道化師の音楽団》、《ジェスター》と《歌う災厄》を連れて参りました」
「ああ」

 ――漏れている。情報が。
 ディラスの険しかった顔がさらに緊張を帯びる。それを悟ったのか、王は横柄に片手を挙げた。

「心配する必要は無い。我々はお前達に危害を加えたりなどしない」

 それよりも、と王がそこで初めて表情らしい表情を浮かべた。微笑んでいるようでもあり、全てを嘲っているようでもある。感じが良いとはとても言えない笑顔。

「ぜひ、彼女の歌声を聞かせて欲しい。保護者の同伴を許したのだ。いいだろう、《ジェスター》?」

 ――つまり。本当に招きたかったのは真白一人だったのだ。だが、如何せん彼女はまだどう見積もっても一人で城へ出入りするには幼すぎた。よって、日中ずっと一緒に行動していたディラスに白羽の矢が立った、それだけ。
 王の言葉の真意を測りかねたのか、ディラスの眉間に深い皺が寄った。それは疑問によるものであり、面倒事に巻き込まれたからではないらしい。

「・・・ただのお客、って事?」
「そうだといいがな」