翌朝。眠っていた真白は突如、部屋へ飛び込んで来たアルフレッドのせいで飛び起きた。どうやら彼は彼で朝帰りだったらしいが、それを感じさせない程の快活さだ。
後ろを見ればディラスもやや眠たそうな目で突っ立っている。意識が覚醒していないのは確かだ。
「起きろッ!お前等に寝てる時間なんて1分たりともねーんだよッ!!」
「うるさいな・・・」
「うるさい!?今俺に煩いつったか真白!」
朝から元気な男である。渋々、ベッドの上に起き上がる。その際、彼等がどうやってこの部屋へ侵入して来たのか非常に困ったが、手に鍵を持っていたのでフロントから借りて来たらしい。マメな奴等である。
そんなアルフレッドの手には一枚の封筒が握られていた。白い封筒だが、金箔でなにやら派手過ぎない――何かの意匠のようなものが刻まれている。
「・・・アル。いい加減、用件を話せ。何も無いのならば、僕は帰って寝るぞ」
「あるから呼んだんだろーがよ。いいから、これを見ろ!」
突き出されたのは封筒。いつの間にか真白の隣に並んでいたディラスが不機嫌さを隠しもせず、しかし差し出された封筒をじっとりと眺める。
「・・・王族が使う封筒だな」
「そう!何が言いたいか分かるだろ、もう!」
アルフレッドの言いたい真意が伝わらなかったのか、それっきりディラスは黙り込んだ。1人だけ話しについて行けていないのは真白である。もちろん彼女はこんな封筒に何の価値があるのか、と首を傾げていた。
「中身は至って簡単な内容だ。お前等に王宮へ来て演奏して欲しいらしい」
「何だと・・・?何かの罠か?」
「王族が使用するこの金箔には――まぁ、難しい説明は省くが、特殊な加工がされている。つまり、この封筒が付いているという事はそういう事だ。嘘じゃねぇよ」
「そうか・・・」
焦っているのはアルフレッド一人だけだった。ディラスは焦りというよりは渋い顔をして何か考えているようだったし、真白は事の重大さが分からない。
――一瞬だけ取り乱したアルフレッドはしかし、開き直ったのか深い溜息を一つ吐き出すと気楽そうに肩を竦めた。
「王族との約束を蹴るわけにもいかねぇ。予定は全て繰り下げだ。予算の事なら気にするな。多めに持って来ているし、王様からも何か貰えるだろ」
じゃ、多分もう外で誰か迎えが来てるから早く着替えて行けよ。
それだけ言ってリーダー様はあっさりと背を向けた。それは暗に、さっさと行けと言われているようだった。