02.

「真白・・・説明しろ」
「うん?」
「説明しろ」
「・・・分かった」

 思いの外、強い口調でそう言ったディラスの為に説明してやろうと口を開く。しかし、彼女のその天才性は歌う事でのみ発揮されるのであって、その他は歌手活動でほとんど学校も行っていないし当然ながら劣化しているのだ。

「下にマゼンダが居るのが見えたから飛び降りた」
「・・・すまない。お前に訊いた僕が馬鹿だったようだ」

 一瞬にして理解を諦めた《ジェスター》の濃い疲れを滲ませる双眸がさっきからニヤニヤと嗤っているマゼンダへ向けられる。保護者の体をなしているディラスが予想以上に面白かったのだろう。
 肩を竦めた彼女は真白ほどでは無いにしろ、常人にはちょっと理解出来ないであろう語彙力で話し始めた。

「いやちょっとあたしにもよく分かんねーんだけど、何か視線を感じて上見たら真白がいて、んでその後ろにさらに何か知らない人がいて、何やってんだろとか思ったら飛び降りたからキャッチした」
「・・・そうか、《ローレライ》か」
「そうそう」

 その人達知ってるよ、と双子が声を上げる。

「俺も真白見つけた時に一緒にいるの見た」
「そうそう。男2人」
「でもお前が飛び降りた後、邸内にいたはずの」
「誰だっけ?逃げた女の方」
「それそれ。そいつが合流したし、真白どうなったか捜さないといけないと思って」
「「放置してきたけど」」

 どういう事だ、と言わんばかりに今度は真白へ視線が集まる。もちろん、彼女は彼等の正体を知っているし正直飛び降りた後、追って来られたらどうしようとか頭の隅で考える程度には長く行動していたと言えよう。

「《賢人の宴》だった。見つかったら絶対危ないと思ってブローチを外してたのは幸いだった思う」
「はぁ?お前、《宴》の連中と会ったの?そーいやさぁ、イリヤ達も会ったつってるけど何であたしだけ出会わなかったんだろ」
「で、その人達は館の外を探索してたみたい。仲間が別に居るみたいな事言ってた」

 それについては僕達が出会ったな、と口を挟むディラス。

「男女の二人組だった。男の方は始末したが、女の方は逃げていたなそういえば。というか、双子。恐らく4人で全員だったはずなのに、何故あの場で殺しておかなかった」
「マジか。ごめんよ、ディラス。あたしがよく言っておく」
「ちゃんと躾ぐらいしろ・・・お前がアイツ等を放置して消えてから、僕がどれだけ苦労したことか」

 ごめんごめーん、と軽いノリで謝罪したマゼンダが不意に声のトーンを落とす。

「4人中1人しか殺してないってことは、相手にもよるけど変に強気になって復讐とか考える可能性があるってことさ。ま、一時は要注意だね」