アルフレッド=ヴィンディアが治める屋敷の一つ。しん、と静まり返った大広間の中心で年齢層も性別もバラバラの男女5名が向かい合って座っていた。漂う空気もばらばら。張り詰めたような空気、何だかふわふわと別世界を漂っているような空気、嘲笑を思わせる空気――
とても顔をつきあわせて会話しているようには見えないものの、その実彼等彼女等は至極真面目に情報交換という名の雑談を楽しんでいるようだった。
ただし、共通点だけはある。一つだが。
全員が全員――逆さ音符の銀ブローチをどこかに付けている。
「僕はずっとお前を捜していたんだが、結局、どこへ行っていたんだ」
《
しかし、話を振られた当の本人はやや首を傾げた。
「何の話をしているの?」
「僕はヴィンディレス邸ではぐれたお前をずっと捜していた、と言っているんだ」
「・・・あぁ」
先日、ディラスと真白が解体したヴィンディレス邸へ足を運んだ。本当は2人で行くつもりだったのだが、あれよあれよという間に大所帯になり、最終的には5人ピクニック気分で邸宅をお邪魔したのは記憶に新しい。
紅茶を口に含み、何かを言い掛けた真白の言葉を遮るように《ジョーカー》――マゼンダが口を開いた。
「真白が暇そうにしてたから外へ連れてったんだよ」
「何・・・?」
瞬間、ぎゃはははははは、とさっきまで大人しかった双子が爆笑しだした。彼等は一卵性双生児、という奴でマゼンダ直属の部下である。見分け方は簡単だ。少女の方がイリスで少年の方がイリヤ。性別が違うのは僥倖だ。
ともあれ、タイミングばっちりに嗤いだした双子はディラスを同時に指さした。
「ひっでー!マゼンダひでー!!」
「いやいやいや!真白っちも酷い!絶対酷い!」
「ディラス超捜してたぜ、あんたの事!」
「なのに敵に見つかってやんの!ダサッ!!」
心の底から純粋にそう言う双子に対し、ディラスはノーリアクションだった。あまり興味が無いらしい。
しかし――彼等の次の言葉には、さしもの彼もぎょっとした顔をする事になるのだが。
「つかさぁ、あれには焦ったわ」
「そうそう。あたしが真白を発見してー」
「まさか崖から飛び降りるとか」
「「ないわー」」
「・・・何?」
そんな様子を見ていた真白が盛大に顔をしかめたのもまた、必然である。