白い部屋、白い家具、白いカーテン。
全てが白で統一されたその空間。ふわりと漂う紅茶の香りが鼻孔を擽る。
「機嫌が悪いようだな」
「悪いよ悪い悪いッ!」
豪奢な部屋でティータイムを楽しむその少女はガチャリ、と音を立てて紅茶のカップを置いた。眉間にこれでもかと言う程皺を寄せ、呻る様は小さな獣そのものだ。
傍らに立つ男はその様を見て憂いの溜息を吐き出した。
「君がどれ程機嫌が悪かろうが私には関係の無いことだ。巻き込まないでもらいたいな」
「そりゃ無理だよ。だってあんた、私の従者なんだから。何寝惚けた事言ってんの?脳味噌洗濯してくればぁ?」
酷い暴言だったが従者と言われたその男の方はまるで意に介した様子も無く、涼しげな様子で佇んでいる。
「ミルクは?紅茶に入れるやつ」
「そこにある。ところで、私はきみに訊きたい事があるのだが」
「何?手短にお願い。今ちょっと考え中」
「――午後から、ブラッドが尋ねて来るそうだ。支度をしておけ」
面倒臭いなぁもう、と少女は呟いた。