「なぁ、お前・・・ヴィンディレス姉妹の敷地だって知ってるか?」
「もちろん」
もしかしたらどこかの街へ出ると思って少女がさ迷っているのかもしれない。そんな可能性に行き当たり、尋ねたが当の真白はあっけらかんとそう答えた。
すると相変わらず不機嫌そうなブラッドが口を挟む。
「仕事って言ってたが、何の仕事だよ。はっきり言って怪しいよ、お前」
うーん、とまったく困っていなさそうに奇声を発した真白は肩を竦めた。淡々と言葉を口にする。
「半分はお墓参り、半分は企業秘密だから言えない」
「はぁ?何、墓参り?ヴィンディレス姉妹の?」
「うん」
――どんな関係だったのだろうか。例の姉妹と。見る限り、少女に落ち込んでいる様子は無い。というか、姉妹に何の感心も無さそうに見える。
まじまじと少女を見ていたせいかちらり、と視線を向けられて言葉に詰まる。
「貴方達は?どうして貴方達は、ここに居るの?」
「えっ!?えぇっと・・・」
言葉に詰まったヴァッシュ。しかし、ブラッドはどこまでも正直だった。
「俺達は《賢人の宴》だ。ほら、バングル。つまり、同胞だったヴィンディレス姉妹を殺した奴を捜してる」
「へぇ。そうなんだ。見つかるといいね」
「・・・適当な奴」
他人事のようにそう言われ、何とも期待はずれな顔をするブラッド。しかし、少女の言い草では本当に何の関係も無さそうだ。たかだか墓参りに来たぐらいだし。
「赤いバングル・・・」
「ま、組織証明って奴だよ。俺達は逃げも隠れもしないぞ、ってな」
「時には、隠れる事も必要なんじゃない?」
そう言った真白は、じっと赤いバングルを見つめていた。