それにしても――見つからない。
館へ一直線に向かわず、何となくちょっとずつ迂回しながらどちらかと言えば少女の連れを捜すつもりで歩いているが何も見つからない。
捜し人も、自分達が探している手掛かりも。
見事なまでに何も見つからない。
「――なぁ、お前、連れ以外に誰か見なかったか?」
見かねたブラッドが黙々と歩く少女、真白に尋ねる。のろのろとこちらを見た少女は首を横に振った。
「誰か、の意味が分からない」
「・・・俺達は《道化師の音楽団》を捜しているが、それらしい人間を見なかったか?どこかに必ず逆さ音符の銀ブローチを付けているはずなんだが」
「見てない」
「そうかよ」
実にあっさりと真白は決断を下した。というか、もし見ていたとしても覚えていないだろう。その会った人物が、どんな格好をしていたかなど。もちろん、ブラッドもあまり良い答えは期待していなかったようだが。
何だか剣呑になった空気を緩和すべく、ヴァッシュは口を開く。
「見てないっていやよぉ、真白、お前の捜している連れってのはどんな奴なんだ?」
「・・・うん、スーツを着てる男の人」
「スーツを着てる男?あー、何かスーツってのが貴族っぽいな。もしかしてお前等もヴィンディレス邸に用があったのか?」
「ンじゃあ間違い無く館の中だろ。何の為に外を歩いてたんだか・・・」
うるさい、とブラッドを一蹴する。彼はたまに要らない事を言って話を妨害してくるのだから始末に負えない。
「というか真白、お前は《男の人》と一緒だったのか?お父さんか何かならそう言えよ」
「ブラッド!ちょっともう、少し黙っとけよ」
「お父さんじゃないよ。何て説明すればいいのか分からないけど、仕事仲間なんじゃない?」
「仕事してるのかよ。つか、殺伐としてるな・・・」
知れば知る程訳が分からなくなっていく不思議。そして、連れの事を語る時もまた無表情の真白。
少々――否、そこはかとなく不気味である。