04.

 困ったように動きを止めたブラッドへ近づく。そして標的へ近づけば近づく程、それがただの少女であることが顕著になり頭を抱えたくなった。
 目が合った序列1位の助けてくれ、と言わんばかりの視線を感じつつ、ヴァッシュは仕方なく助け船を出した。

「えぇっと・・・驚かせて悪かったな。迷子か?」
「・・・」

 振り返った少女。長い黒髪にショートドレス、白いマフラーが実にミスマッチ。そして何より。
 ――無表情ッ!
 振り返った少女の顔には一切の表情が無かった。怒っているわけではなさそうだが、そこはかとなく意図が読めない、明らかに面倒な臭いのするこの状況。しかし子供慣れというか困惑して動こうとしないブラッドに全てを丸投げするわけにもいかない。

「あ、俺、ヴァッシュっていうんだ。お前は?」
「・・・真白」
「うん?あまり聞かない名前だな、それ・・・」

 異国から来たのだろうか。いやいや、そうだとして何でこんな所に――

「えっとそれで、お前は何やってんだよ」
「はぐれた、連れと」
「連れ?お父さんとか、お兄さんとか?」
「そんな歳に見える?私は、連れとはぐれたの」

 冷たい声で言われ、一瞬言葉を失う。
 確かに童顔ではあるが、その振る舞いは子供扱いするには少々違和感がある。外見は一先ずすまん、と謝りさっきから無言の姿勢を貫き通しているブラッドへ何か話せとアイコンタクト。
 ややたじろいだブラッドは首を振り、そしてそれを感じさせないいつも通りという名のポーカーフェイスを被って問うた。

「じゃあ、お前はここがどこだか分かってんのか?」
「分かってる。けど、その人が何処へ行ったのか分からない」
「成る程ね・・・」

 ふむ、と考え込んだヴァッシュは提案した。丁度良い。

「一緒に捜すか、その連れ。俺等もまだここら辺を探索したいし、ついでに」
「別に、私は一人でも――」
「いや!良くない。それは良くないぜ!女の子をこんなほとんど森みたいな所に放置するのは人間的に」

 途端、ブラッドの不機嫌そうな顔が視界に入った。
 そんな彼に小さな声で意図を伝える。

「これで館内に入れるだろ。だって、迷子の連れ捜してたって言えばクレア達も文句なんて言わないはずだ」
「冗談じゃねェよ・・・そいつも、一人で良いって言ってるし」
「お前、子供嫌いだったっけ?」

 とりあえず、イレギュラーな展開だが真白という少女を仲間に加え、随分離れてしまったヴィンディレス姉妹の館へ。