とりあえずは屋敷へ行ってみるという方向で話を進め、進路を変える。男二人で楽しく会話が弾むはずもなく、終始無言のまま目的地へ。
「・・・ん?」
やや歩いた後だった。ブラッドが訝しげに眉根を寄せ、立ち止まったのは。どうした、と視線だけで問えばうーん、と呻った後彼は呟いた。
「人の気配がする、な・・・」
「はぁ?俺には全然分からんが・・・」
「いや、繊細さに欠けるお前が気付かねェのは当然だろ」
「本当に失礼だよな、お前」
憎まれ口を叩きつつも場に緊張が走る。
この木々のせいで視界は良好とは言い難い。奇襲するとして、ここほど適した場所は無いのだ。
そして恐らく――この場で遭遇する敵の種類としては間違い無く《
そう考えると唐突な出現者はあまり歓迎出来る気分ではないのだ。
もちろん、探しているのもその音楽団で、実に矛盾した考えなのだが。
「隠れてるわけじゃなさそうだな。隠れるなら隠れるで、もっと上手くやるだろう」
「どうする?そのまま無視して通り過ぎるか?」
「・・・いや。ヴァッシュ、そっちから回り込め。俺は反対側から行く」
「一般人だったらどうするつもりだよ」
呟きつつも、言われた通りに何者かがいるポイントへ向かって足を進める。
上手く背後に回ったようだがあれは――
「よう。なにコソコソ嗅ぎ回って――え?」
正面から現れたブラッドが常套句を並べ、その人物へ近付き、そして素っ頓狂な声を上げた。
かく言うヴァッシュにも何となく後ろ姿だけで想像が付く。
どう見てもこれは――子供だ。