02.

 目新しい情報はほとんどと言っていい程得られなかった。当然のことだが、先にも述べた通り国軍が粗方片してしまったようだ。彼等にとって、この場は無関係の惨劇でしかあり得ないのだから。

「この分ならば、外を探索しているブラッド達も収穫は無さそうだな」
「そうなるね。どうしよう、無収穫なんて」

 何が悲しいかって、ここまで遠路遙々徒歩でやって来たというのに何も無かったことが一番悲しい。
 はぁ、と一つ溜息を吐いたクレアは気でも紛らわそうと話題を変える。

「そういえばさー・・・そもそも、ヴィンディレス姉妹は何で二人だけで《ジェスター》に向かって行ったんだろう。実力差なんて、蓋を開けてみなくても十分過ぎる程十分に分かっていたはずなのにさ」
「それは、一理ある、な」

 渋い顔をしたヴェルトは何と言えばいいのか迷うような顔をし、やがてゆるゆると首を振った。彼にしては珍しい、煮え切らない態度だ。
 伏せた目のまま、苦虫を噛み潰したような声音で呟くように序列7位は言葉を吐き出した。

「そもそも彼女達は――《賢人の宴》に仇討ち目的で入った。だからこそ、動かない俺達の態度に不満を抱き、勝てぬと知りながら挑んだ、のが正解じゃないのか」
「へぇ。何でそんな事知ってるの?」
「お前より前に俺が入ったからだ、クレア」

 ――事実。クレアが《宴》のメンバーに加わったのはたった2年前である。その時にはすでに序列全ての人間が揃い、今はいない人間も確かに存在していたりする。
 そして、クレアの後に加わった人間は一人もいない。
 実質上、彼女は本当の意味で一番最後に加わった仲間なのだ。

「誰の仇討ち?」
「父親だ」

 ――そう、と答えたクレアは思考する。
 あの高飛車な姉妹も人の子で、血の通った物の見方を出来るものなのだと。まるで、実感は湧かないのだが。
 そこまでするものなのか――父親のために?

「分からないなぁ。私の歪んで使い物にならない物差しじゃ、それがどれだけ重要で、人生を掛けるに値して、挙げ句虫螻みたいに殺されてもいいなんて。全然分からない」
「そうだろうな。お前には、多分、一生――分からないだろう」

 意外にも厳しい言葉に瞠目したクレアは顔を上げてヴェルトを見やる。彼は、何とも言えない苦笑しているような戸惑っているような、そんな曖昧として模糊な表情を作ったままだった。