09.

「ヴィンディレス邸内の情報収集と、外の情報収集に別れよう」

 いつになく真剣な――というか疲れ切った顔でアークヴェルトが宣言する。
 この場にいるのは4人。つまり普通に割れば2人ずつになるわけだが、それについても決まっているようなものだった。
 目的が似ているブラッドとヴァッシュ、どちらでもいいヴェルトと関わりたく無いクレア。それで班分けは終了だ。だが、問題はその次。
 ――一体、どちらが、どこを担当するのか。
 生憎と調査のいろはなどまるで分からないクレアには見当も付かないが、外と中だとどちらの方が敵と遭遇する確率が高いのだろうか。かなり重要な問題である。

「揉める前に言っておくが、外も中も遭遇率はだいたい同じだ。が、もし中で出会わなかった場合、外に居た方が遭遇する可能性は高くなる」

 一瞬、ヴェルトと目が合う。若干済まなそうな顔をしている所を見るとここはどうしても引けない問題だったらしい。しかしまぁ、彼の済まなさそうな顔を見ていると多少は許せてしまう。
 一瞬の沈黙ののち、声を上げたのはヴァッシュだった。

「じゃあ外がいいだろ。もし、中に居たらお前等がこっちまで逃げてくりゃいいし」
「・・・私達は囮か」

 陽気に笑うヴァッシュに微かな殺意を覚えたが黙ってやり過ごす。ここで事を大きくすればまたヴェルトの怒りを買ってしまいかねない。

「異論が無いのならば決定するぞ。ヴァッシュとブラッド、中は俺とクレアだ」

 異論無いでーす、という声が響き、やっと会議室から解放される。