06.

「おっし、まず話し合う事は一つだ!どうやって《道化師の音楽団クラウン・パーティー》に乗り込むか――」
「おい待てコラ」

 ブッ飛んだ事を言い出したヴァッシュの頭をどつき、据わった目でクレアは彼を見下ろした。いきなり何を言い出すんだこの大馬鹿野郎は。
 対立に関しては全面的に拒否の姿勢を取る彼女にとってみれば彼の一言は非常に遺憾としか言いようが無い。が、当の本人はきょとんと首を傾げているわけなのだが。

「ふざけんなよオイ。誰がどこに、どうやって乗り込むって!?返り討ちフラグだからね、それ!!」
「え?そんなもんか?」
「そんなもんだよ!」

 どうやらこいつ、本当に戦況の有利不利が見えていないようだった。相手は《音楽団》と言えば聞こえは良い、実際はただの《ローレライ》集団である。普通の人間が多い《賢人の宴》が真っ向から戦えば甚大な被害が出る事だけは間違い無い。
 それを差し置いたとしても、どちらかと言えば平和主義者であるクレアは喧嘩などはなっから否定的見方しか出来ないわけなのだが。

「おいおいおいおい!そりゃねぇぜ、クレアちゃんよォ!ンなの全ッ然面白くねェだろうが」
「面白さで判断しないっ!全然面白く無い、ってどう転んだって面白く無いわ!」
「なぁなぁ、クレア。何かっかしてんだよお前。落ち着けって」
「煩いッ!ちょ、二人いっぺんに話すの止めッ――」
「そういや俺、昨日お前の部屋に上着置いていかなかったっけ?」
「関係無ッ!おいこら、どさくさに紛れて私のお菓子盗らないでよヴァッシュ!」

「黙れ、貴様等ぁぁぁ!!」

 ほとんど会議の体をなさなくなってきた一同に怒号を浴びせたのは先程からずっと無言だったアークヴェルトである。プルプル震えているところを見ると相当ご立腹の様子。真面目な彼にこの空間は耐え難かったのだろう。
 両手でバンッ、と会議用机を叩く。ミシミシッと嫌な音がしたがそれにツッコむ者はいない。

「――仕切り直しだ。席に座れ。そしてそこから動くな」

 呻るような低い声で言ってのけた彼に従うように、一同はいそいそと自らの席へ戻っていった。