翌日、集会の為早起きしたクレアは大きく伸びをした。いつもより1時間早く起きただけだというのに何だか全身が怠い。言うまでも無く先に起きて部屋へ来、朝食の準備をしていた従者であるレクターと目が合う。
恭しく一礼した彼はしかし、変な気安さを以て問うた。
「行くのか?」
「――まあ、ブラッドが直接来たんじゃ行かないわけにはいかないだろうからね」
《賢人の宴》内における序列1位の名は伊達じゃない。そんな彼にわざわざ足を運んでもらったのだから、まさかスルーしていつも通りの日常を満喫するわけにもいかないだろう。何とも癪な話だが。
そして序列7位までが参加資格を持つその集会にレクターが着いて来る事は出来ない。彼が何者なのか未だ謎だが、それでも彼があまり公の場に顔を出したがらないのは前々から知っていることだ。
「それで、君はどっち側なんだ?」
「またその話?私は、何があっても、仇討ちには賛同しかねるね。だって面倒だしそれに、あの《ジェスター》っていうのはヤバイよ」
「ほう?」
嫌悪の表情を浮かべればレクターが珍しげに相槌を打ってくる。クレアはあまり人間に対する好き嫌いが無い方だし、何より話した事も無い人間に対してそういう露骨な顔をすることなどほとんど無いのだ。
顔を曇らせ、しかし心底冷たい目で序列2位は首を振る。
「《クラウン》、《ジョーカー》、《ピエロ》――そして、《ジェスター》」
全てが全て、道化師の呼び名である。つまり、《
顔だけならば《宴》メンバーならば誰でも知っている事だろう。
「私は、正直に言うとあの中で一番人間らしく無いのは《ジェスター》で間違い無いと思う」
「何故?」
「人間じゃない《何か》が人間の真似事をしているようにしか見えないんだよね。それが、どうしようもなく不気味だと思えるよ」
人間を演じる道化。高くとまり、無理矢理自分を人間のランクに落とす、まさに宮廷道化師。無い人間味を引き出そうとする愚か者に相応しい名である。
「――《ジェスター》に気を取られるのもいいが、実質的に危険な人物であるのは他3名も同じだ。気をつけろ」
「はぁい」
暗い話は終わりだ、とクレアはバターブレッドに手を伸ばした。