《道化師の音楽団》。
それに入団した場合のメリットは何だろう。
一つ、野垂れ死ぬ可能性が無くなる。まだ入るとも決めていないうちから、アルフレッドは真白が不自由な思いをさせないように計らうと約束した。だからこそ、野垂れ死にはあり得ない。豪邸の主が餓死者を出すはずがないのだから。
一つ、好きなだけ歌ってもいい。これもまた当然だ。音楽団とは奏でる為の集団であり、それを禁じてしまえばこれ以上無い程に無意味な集団と化してしまう。
「――在り来たりね。事務所と何も変わらないわ」
では逆に、入団した場合のデメリットは何だろう。
一つ、戦闘行為に身を投じることになるかもしれない。ただしこの件については真白の《ローレライ》としての能力を判断してからになるだろう。だが、今までの経緯でサポート系統の能力でないことは確実なので戦闘員は必至。
一つ、保護者を自称する《ジェスター》こと音楽家のディラスが猛反対している。口にこそはっきりと出さないが、その話題に関して何の情報も提供してくれないのがその証拠。フェアじゃない、とまで言っていたのだから間違い無い。
「とは言っても、二つ目のデメリットは除外ね。ディラスがどう思っていようと、私の選択肢には何の影響も無いのだから」
早々に考えるのが面倒になってきた。
譜面を睨み付けているならばまだしも、何故これからの生活についてこうも頭を悩ませているのか、自分は。
だが、選択肢を与えられた以上、最善の選択をしたいと思うのは人間の性である。どちらが最善か常に迷い続けるのは人間だけの専売特許だ。
あー、と意味の無い奇声を上げてマフラーをきゅっと握る。ふわりと柔らかいそのマフラーは季節にまるで合っていないが気にはならなかった。
――もちろん、考えに考えていた真白がうっかり寝てしまったのは言うまでも無い。