眩しすぎる照明。反響する澄んだ高い声。それと対比する静謐。
少女は歌を紡ぎ続けていた。
所謂スタジオという場所にはスタッフの他にも人が溢れていたし、少女だけが歌う番組ではないのだが、事実彼女の為だけにこの時間を取っているのであり、そういう意味では少女がそうやって気前よく歌い続けてくれるのは好都合であった。
彼女の出番は15分。新曲を二曲と、以前のアルバムに入っていたリクエスト曲を一曲。それで15分。長すぎるでもなく短すぎるでもない。
音が――反響し、飽和し、消える。
それ以外の音の存在を否定するように響き続ける音色に人々は息を呑み、聴き入る。
少女の歌声は途絶えない。
ギィッ、と何かが軋む音が聞こえた。静謐を乱すその無骨な音は誰の耳にも届かない。ギィ、と。もう一度。無粋な雑音が最後の忠告を静かに終える。
少女の歌声は消えない。
「これなら来週の収録にも――」
そう静謐を破った女性スタッフの頭上。
ギィィィ、と無骨で無粋で無感情な音が響く。瞬間、糸が切れたようにそれが落下した。少女を照らし出していた、その照明が。
がしゃん、と凄まじい音を立てて落下した。悲鳴が響き、場が騒然とし、ある者はその場から逃げ出してある者はその場に突っ立ってある者は凄惨な事故現場から目を逸らす。
少女の歌声は止まない。
「しょ、照明が・・・ッ!病院、病院に連絡をッ!まだ息が――」
「こっちにも一人下敷きになってるぞ!誰か手を貸してくれ!」
「何で証明が!?しっかり固定されてるんじゃないの!?」
阿鼻叫喚。絶え間なく悲鳴が響き、混ざり合う。
高く澄んだ歌声と、人の悲鳴と、落下物除去作業の音。
混ざって混ざり合って反転し、奏でる。
――少女の歌声が響き続ける。