「何をうろうろしている」
「ひっ」
ロビーをうろついていたら声を掛けられた。誰だと思えば吃驚。まさかのボス、トラヴィスだ。やはり何を考えているか分からない無表情。
しかし本来予想していなかったとはいえ、シンシアには急ぎで解決しなければならない問題があった。丁度――何を考えているか分からないとはいえ、自分よりはきっと頭が良い人間が目の前にいる。
「あ、あの・・・訊きたい事があるんですけど」
「いいだろう。話せ」
意外にも話に乗ってくれた。ここまで来てやっぱりいいです、とは言えないので出来るだけボスと目を合わせないようにしながら問い掛ける。
「えっと・・・『をかし』ってお菓子の親戚か何かですか?」
「それは誰に言われたんだ」
「フレディですけど」
そうか、と一つ頷いたトラヴィスから何か手に握らされた。そのまま彼は踵を返して部屋から出て行く。
手の中には包みに入ったあめ玉が乗っていた。