う 薄味、濃い味、家庭の味

 がっくりと項垂れたフレディを視界に入れ、それとなく実は結構マズイ事態なのだと気付く。
 日は既に傾き、日付が変わるまでに拠点へ戻れる可能性は著しく低い。シンシアとその保護者が打ち出した答えは野宿以外に無かった。だが、如何せん1日で帰って来るはずの日帰り仕事だったのだ。食料は何も無い。

「ねぇ、どうしようか」
「いや俺も今それを考えてんだがよ・・・。自炊は出来るんだ、自炊は。ただ食材がねぇ」
「え?自炊なんて出来るの。それって残飯とかじゃなく?」
「お前俺を馬鹿にしてるだろ」

 彼がフライパンを握ってみたり包丁を握ってみたりするところはどうにも想像出来ない。ただ、アレンのそうした姿は――否。ただのマットサイエンティストになる。間違い無く。

「フレディ使えないなぁ・・・。私の面倒を見てくれてたスラムのお姉さんは一言お腹減ったって言ったら焼きリンゴでも何でも作ってくれたのに」
「焼きリンゴって美味いの?俺食った事ねーんだよな。生の方が美味しそうじゃねぇか?」
「どっちもあまり味変わらない」
「味覚腐ってんじゃね?」

 食べ物の話するな、とフレディが唐突に憤慨する。というかふて腐れている。

「腹減るだろ。食いもんの話は止めようぜ」
「そうだね。じゃあ私、寝るから。後よろしく」
「ハァ!?」