り 良縁を欲するならば

「おーい、おい起きろ」

 今週に入って何度掛けられたか分からない台詞にシンシアは目を開いた。見下ろしているのはフレディである。呆れた顔をして肩を竦めているが――

「・・・屋敷で寝てるんだから起こさないでよ」
「大掃除やってる奴がいんだよ。面倒だから起こして来いって言われたの、俺」
「そう・・・な・・・・・」
「寝るな!」

 フレディの言葉を無視。再び眠りの世界へ。ボス――トラヴィスからはどこで寝ていてもお咎めを受けないように頼んでいる。ので、所詮その「起こして来い」という言葉に拘束力は無いのだ。
 そこでフレディを呼ぶ声。困ったように一時固まった彼は仕方なく呼ばれた方へと消えて行った。

「おいお前、邪魔だ退け」
「は――痛いッ!?」

 適当な返事をしたら思い切り頭を叩かれた。地味にというか普通に痛い。飛び起きれば鬼のような形相のハーヴィーと目が合った。
 ――相手が悪過ぎる。

「随分な身分だな小娘。こっちは働いているというのに呑気に昼寝か。半人前の分際で」
「うっ・・・いやその・・・・・・・・・」
「寝るな」

 ばこっ、と持っていた本で頭を叩かれる。彼に容赦とか遠慮という言葉は無かった。
 なお、二人は同じようなやり取りをこの後5回に渡って繰り広げる事となる。