い 為政者たちに断罪を

 燃えてますね、と小宮山樒が呟いた。それを隣で聞く本郷青桐はただそうだな、と呟く。
 状況は極めて単純だった。
 城が燃えている。以上。

「内紛か、反乱か、或いは隣国の仕業か――」
「樒よ」
「どうされました、青桐殿」

 あまりにも淡々と言葉を紡ぐ友人に青桐は困惑を隠せなかった。彼女は高以良の領主で、今回は偶然この城へ帰還していたのだが、いくら今は自分の職場ではないとはいえ城がこんなに燃えていたら動揺するのではないだろうか。
 しかし、彼女には助けられた恩がある。突然の火事で対応に戸惑っていた自分を救ったのは間違いなく彼女だ。
 故に、青桐は問いたい事とは別の疑問を口にした。

「父上達は・・・無事だろうか」
「大丈夫です、とは言えませんね。この火事ですし、王城を狙うという事は、目的は間違いなく陛下の首です」
「そう、か。樒、私の事はいい。父上を捜してはくれないか?」
「それは聞き入れられません。熊笹殿は百戦錬磨の武人。私のような小娘に助けられるような方ではないでしょう」

 それに、と樒の視線が青桐を捕らえる。つられて青桐もまた、頼もしい友人の方を見て――そして、気付いた。

「し、樒ッ!」
「え?」

 どん、と嫌な音がした。鈍い音だ。
 驚愕した樒の視線が青桐から外れ、下へ下へと降りていく。
 赤色に濡れた銀の刃が彼女の細い身体を貫いて飛び出していた。そんな彼女の背後には鬼のような形相をした、名も知らぬ男が立っている。
 よろけた樒が倒れていくのが、やけにゆっくりに見えた。