も 門限まで残り三分を切ったところ

 鳳堂院家の門限は厳しい。そもそも、伊織は城外へ出る時には門限どころか父の許しが必要なのだが、それにしたって恋人である神楽木千石との逢瀬にまで門限があるのはどうなのだろう。
 石動の過保護さに呆れつつも、門限を破ると煩いので従う姿勢で毎日を過ごす。

「千石様は何の食べ物が好きなの?」
「旬の魚だ。というか、旬のものが好きだな」
「旬料理が好きって事?」
「あぁ。旬以外の野菜や魚は駄目だ。どうも薄味だし、何より小さい。その季節に合った物を食すべきだ」
「頭硬いなぁ・・・」

 他愛のない会話をしている際、ふと時計に目が止まる。
 門限まで――あと3分。
 ぐぐっ、と背伸びした伊織は立ち上がった。長椅子がぎしりと音を立てる。伊織の様子に気付いたのか、千石もまたちらりと時計を確認した。

「行くのか?」
「そろそろ帰らないと。あ、千石様」

 椅子から飛び降りた伊織はとびきりの笑みを浮かべる。

「また明日」