「いいよー」
松葉や紫苑には見せたのに蘇芳だけはドルチェが魔法を使っているところを見た事が無い、という旨を伝えると気前よく魔女は頷いた。
宙に掲げた手をくるりと回す。
途端、室内が凍り付いた。
「寒いのだが、ドルチェ」
「そうかな?」
「何の腹いせだ」
「え!?」
氷の結晶は確かに美しいが、それにしては寒すぎる。春先の陽気が軽く吹き飛んだ。こんなにも寒いというのにこの状況を引き起こした魔女は涼しげな顔をしている。
「せぇい!」
「おい、雪を降らせるな。絨毯が濡れる」
「どう?綺麗?」
「綺麗だが、時と場合を考えてくれ頼む」