ひ ヒーロー志願者は限りなくゼロに等しい

 無灯志紀は自分の周りをぐるぐる周りながら自身の1日の生活態度について語る後輩、佐伯京也をぼんやり眺めていた。ほとんど話は聞いていなかったが、彼は相槌を求めて来るタイプの人間ではないので構わないだろう。
 しかしここで、問題が一つ発生した。

「志紀さんはどんな人がタイプなんスか?」
「何言ってんの、京也くん。・・・あれ?何の話からこうなったんだっけ?」
「だから、俺が隣のクラスの大倉さんに告白された話」

 ――随分くだらない話を延々としていたらしい。
 情報通な友人、河野陽菜曰く、京也は所謂『モテる』らしく日常的にラブレターだの校舎裏呼び出しなどを受けているらしい。
 ともあれそんな人気者の彼が平気な顔をして志紀と一緒に下校しているのはある意味奇跡なんじゃなかろうか。そんな彼からの質問によって、志紀は『タイプ』について考えてみる。

「私は草タイプが好きかな。何か目に優しい色してるし、ほら、相手の体力吸って回復できるじゃん?」
「何の話だ!それあれッスよね、ポケ●ン!あんた人の話は全然覚えてねーのにゲームのシステムちゃっかり覚えてんじゃねーか!」
「ごめんぶっちゃけ話ちっとも聞いてなかった」
「なお悪いわ!好きな男のタイプッスよ!逃げようたってそうはいかねぇぞ!」

 ふむ、と一つ頷いた志紀は迷うこと無く答えた。というか、彼女の中での最低条件を提示した。

「私の物忘れで怒らなくて、毎日朝から起こしてくれて、私の身の回りの事全部してくれる人かな」
「え?家政婦が欲しいつってんスか?」
「え?彼氏にするならどんなタイプって聞いてるんじゃないの?」

 しん、と二人の間に静寂が満ちた。