「私、まだ25なんですよぅ」
「ごほごほっ!」
客人を前にそう言った志水。一色は思わず飲んでいた茶を器官に流し込んでしまい、盛大に噎せた。子供2人持ちながら何を言っているんだこいつは。
客人は九十九雲雀。高千穂の配偶者であるが、そんな彼が神楽木邸へ来たのは志水がここへ彼を招いたからである。
曰く、「高千穂の旦那さんとお話してみたいのですよぅ」だそうだ。理解出来ない。
恐る恐る、雲雀の方を見やる。彼は冗談と嘘が通じない実直な、一色に言わせてみれば愚直な男なので彼女の言葉を真に受けて「そんなわけないでしょう」などと言い出しかねない。
――が。
「大丈夫ですか、一色殿。何故、いきなり茶を噎せて・・・」
――愚直ッ!
彼女の年齢偽装には気付かず、唐突に茶を詰まらせて咳き込む上司を見てそっちの方が気になったらしい。良かったような悪かったような。とりあえず、一色の心臓には優しくない状況である。
「すいません、志水殿。それで、何でしたっけ?」
「えぇ、私、まだ25なの」
「そうなのですか?お若いのですね」
――こいつはこいつでトチ狂ってるな。
そう溜息を吐き、一色は立ち上がった。馬鹿な人間の話ほど、聞くに耐えないものはないと。