「志紀ちゃん志紀ちゃん。おはよう」
「おはよう。ところで、貴方、誰?」
「志紀ちゃーん。今日、祐司の奴がな――」
「・・・誰だったっけ?」
「えぇ!?ちょ、よう考えて思い出してや!結構傷つくんやで!?」
「ごめん、分からない」
「考える努力しろや!!」
「なぁなぁ、志紀ちゃん。次の土曜日、どっか行かん?」
「行かない」
「なんやいけずーやなぁ」
「いやそもそも、あんた誰?」
***
以上の回想を祐司に話し終えた篠崎出雲は盛大に溜息を吐いた。それを見て鬱陶しそうな顔をする弟に泣きたい気分になってくる。
「なぁんで俺の名前覚えてくれんのや」
「名前どころか顔も覚えられてないで、兄貴」
「マジかー。割とショックや、今。どーいう事なんや・・・」
そーいう事なんやないの、と素っ気なく言う弟の言わんとする事が分かり、出雲はあー、だのうー、だのの奇声を上げた。