た 黄昏に暗まされた君の顔

 私の最近の日課。
 一日に必ず一度は図書室へ足を運ぶ事。
 というのも、最近物騒なので一人では外へ出られないし、紫苑ちゃんも忙しいから声を掛ける事が出来ない。人の迷惑になると思ったら、外へ行きたいなどと言い出せなかったのだ。
 変な所で殊勝な自分の性格は熟知している。人が迷惑している傍で自分だけ楽しい思いをする程図々しくないのも、知っている。

「――ドルチェ」
「え?」

 不知火蘇芳。ぎょっとしてセンチメンタルな気分から引き戻される。彼とここで会うのは二度目。一度目はエリザ嬢と一緒だったので声は掛けなかった。
 そして今、二度目。
 いくらやや打ち解けてフレンドリーに会話出来るようになったとはいえ、いきなり話し掛けられれば心の準備とか諸々の理由で萎縮してしまうのは当然だった。

「暗い顔をしているな」
「いや・・・その・・・」
「不気味だから止めた方が良い。化け物の類かと思ったぞ」
「あんた最近次から次に毒吐くな」

 ふ、と蘇芳が笑う。彼の笑うタイミングというのはおよそ平民である私には理解出来なかった。

「ドルチェよ、外へ行こうか。夕日が見えるらしいぞ」
「はぁ・・・」

 やはり、皇族というのはよく分からない。