す 崇高なれば敬い給え

「余って皇帝だったよな・・・」
「そうですね。何を言っているんですか、いきなり」

 東国を統一してから1年。執務室でまだ幼い娘と戯れながら、鳳堂院石動はぽつりと呟いた。目の前には例の戦いで活躍した武将達が所狭しと並んでいる。
 ――呼んでもいないのに。
 この勝手な事をやらかしてくれる仲間達を前に、石動は狼狽していた。用が無いから出て行け、という直球な言葉はするりと躱された。彼等は何が何でも部屋から出て行きたくないらしい。

「うん、とりあえずなんでお前達は余の部屋にいるのだ。狭いだろう、男4人いれば」
「お言葉ですが、石動殿」

 ずいっ、と前に進み出て来たのは先程から不機嫌そうな顔を隠しもしない神楽木一色だ。眉間に皺を寄せ、目の下に隈を作っている。

「先日、私がお渡しした書簡はどうなったのですか?印を押していただかないと、仕事が進まないのですが。職務妨害ですかな、殿よ」
「す、すまん・・・」
「謝らなくて結構。彼等など気にせず、その書に印を押してください」

 ――正当な理由だった。仕方なく机の端に山積みされた書簡を開く。

「いや待て!一色は分かった!だが、お前達は何なんだ!?」
「石動殿・・・仕事をなさるのでしたら、伊織さんはお預かりしましょうか・・・?」
「いいって、そーゆーの!伊織の面倒は余がちゃんと見てるから!」

 土御門悟目だ。油断も隙も無い。いいから帰れ、と言って部屋へ帰るように促すと何故かそれに伊織が同行した。あれ、伊織って誰の娘だったっけ。
 最初に一言だけ話した更科志摩も退室。
 本当に何しに来たんだ。