こ 公然の秘密を背に隠し

「やぁ、キリト」
「・・・真白」

 唐突に現れた客を見て調律師、キリトは隠しもせず舌打ちした。
 彼女とは現代日本において切磋琢磨しあった良きチームメイトだったりそうでなかったりしたが、今そのノリで店に顔を出されても困る。
 この絵面を見た時、《ジェスター》がどういう行動に出るのか分からないからだ。彼は何も考えていないが故に、キリトにとって脅威だった。そもそも現代人たる彼が戦闘に身を置くディラスを相手に勝てる見込みなど万が一にもありはしない。
 よってそんな爆弾の種みたいな存在の真白が気軽に店へやって来る事は迷惑以外の何者でもなかった。

「お前、どうやって何しにここへ来たんだ」
「アルフレッドに送って貰って、この楽器達を届けに来たの」
「誰のフルートだそれは・・・」

 恐らくはヴィンディア邸にある大量の楽器のうちの一つなのだろうそのフルートを抱えた真白。歌声こそが武器である彼女に、楽器は恐ろしい程似合わなかった。

「で?お前自身の用件は?」
「見つかったら後が恐いっていうスリルを味わいたかっただけ」
「おい、表へ出ろ。俺がじきじきに相手をしてやる」
「大声でディラス呼ぶけどいいの?」

 睨み合う事数秒。先に視線を外したのはキリトだった。