一ヶ月に一度、3人でグループを作って料理を作り、そのグループ内で試食会をする催しが家研部にはある。このグループ編成にも細かいルールや暗黙の了解などがあるのだが、それは省かせてもらおう。
集まった面々を見て、神埼悠那は微笑んだ。
唯一の3年生は檜垣玲璃、もう一人は同学年の朝比奈深夏だ。同学年はまだしも、先輩方と組む時は毎回ドキドキさせられるが今回は比較的に仲の良い玲璃だ。気が楽である。
集まった面子を見た玲璃が口を開いた。
「よし、じゃあ何を作ろうか。内容が被ったら面白くないから、一応打ち合わせる?それとも完全に闇鍋状態で始める?」
「いえ、一応薄ボンヤリとは決めましょうよ。闇鍋はちょっと・・・」
「だよね」
闇鍋というのは恐ろしいもので、以前、一度やらかした。例えば3人が3人ともご飯物を作ってしまい腹がぱんぱんになったり。全員が菓子類を作って口の中がベタベタに甘くなったり。あるいは油物と冷えたアイスが同時に出て来てお腹を壊したり。
とにかく、何の打ち合わせも無しに個々が勝手に作り始めるのは危険だ。周りを見回せば他のグループも念入りに何やら話し合っている。料理をしている時よりも真剣な表情で。
「えーっと、じゃあ菓子類はどうですか?甘い奴と甘くない奴をこう、混ぜる感じで」
「悠那ちゃん、もしかして私に喧嘩売ってる?」
「あ。・・・いやまさか、そんな・・・」
えへへ、と笑って誤魔化すものの玲璃の目は据わっている。彼女、菓子類を作るのが壊滅的に下手なのだ。
微妙な空気をブチ壊すように深夏が意見する。
「阿弥陀で決めましょうよ、先輩。何が当たっても恨みっこ無し、って感じで」
「おー。それは面白そうだねぇ。じゃあ、そうしようか」
阿弥陀の結果、悠那は和物、深夏は洋食、玲璃は菓子類になった。
このグループは呪われているんだと思った。