「おい、何寝てんだよ」
退屈を持て余してふと振り返るとソファに横たわって規則正しい寝息を立てている幼馴染みの姿があった。それに既視感を覚えつつも、裕司はその寝顔を覗き込む。
中学に上がる少し前であったのならば何の事は無い日常風景だったのだが、さすがに6年近く経っていると違ってくるものだ。それに、前までは本当に幼馴染みであったけれど、不良という空白期間を挟んでからは疎遠になっていた気もする。
「・・・おーい」
もう一度起きないか、と声を掛けてみるも起きる気配は無い。渚はいつでもどこでも寝てるような人間なので昨日夜更かしした、だとかいうのは関係無いのだろう。
華奢な身体を揺すってみる。
途端、鬱陶しそうに右手で手を払われた。ムカついたので本格的に起こしてやろうと立ち上がった瞬間。何故か足を滑らして転倒。その際、後頭部をぶつけた裕司はそのまま気を失った。
その後、伸びていた裕司を見て渚がゴキブリみたいだと笑い飛ばしたのだがそれは白山裕司という男子生徒のプライドに関わるので説明は省略させてもらう。