え エンドレスで流れる恋詩

 えへへ、とだらしない顔で笑う後輩を見る。そして、気付かれないようにそっと梧桐章吾は溜息を吐いた。
 ――現在の時刻、7時半。あたりは真っ暗だ。
 数日前、団体・個人ともに県での試合を勝ち抜いた西高のテニス部はインターハイへの出場が決まった。それにより、本来日が暮れてしまえばボールが見えなくなるのでそこで練習終了なのだが、ライトを付けて貰えることになった。校長からの憂慮だ。
 本来は6時に終わる部活が、7時半に。
 当然、隣に並んでいる朝比奈深夏を長い時間待たせる結果となっている。いや、待ってくれなどと頼んだ覚えは無いし、むしろどうして彼女が自分を待っているのか分からないのだが。
 ――しかし、心苦しいのは事実である。

「家研部は」
「はい?」
「――家研部は、何時まで部活をしているんだ?」
「え?5時半までですよ。文化部なんで時間短いんですよね。夏場は6時ぐらいまでいますけど。それが、どうかしました?」
「俺の事をどうして待っているかとか、そういう疑問はこの際置いておいて言うが、別に待たなくていい。見ろ、もう真っ暗だ」
「そうですね。あ!もしかしてもしかして、私の事、心配してくれてます!?大丈夫ですよ、先輩が送ってくれますから!」
「どさくさに紛れてハードルを上げるな」

 実際問題、家の近くまで送っている事は確かだ。まったくの反対方向だとか、家同士がかなり遠いとか、そうじゃないようだから。

「むしろ、家まで送ってくれればいいのに!」
「・・・あまりそうやって人に自分の家を教えない方が良いぞ」

 ストーカー事件とか最近多いから、とは言わなかった。あまりべらべら言葉を使うと、この後輩をつけ上がらせそうだ。

「別に先輩ならいいですよ。いやいっそ私の家に案内しましょうか?」
「・・・いい」
「照れないでいいんですよ、先輩」
「・・・・・・・・」

 章吾は何度目になるか分からない溜息を吐き出した。