あ 相性占いなんて当てにならない

「ふーん、私と三城の相性は概ね良し、だってさ」

 昼休みに入る5分前。唐突に檜垣玲璃はそう言った。余談だが、昼休み5分前という事は現在授業中である。
 そんな言葉に釣られて三城成実は隣に座るクラスメイトに視線を向けた。彼女は彼氏持ちなのでそういう言葉を吐かれたところでむしろ迷惑なのだ。

「占い、それ?」
「うんそう。何だっけ・・・生年月日入れるやつ」
「あぁだから、さっき誕生日訊いてきたんだ」

 ヒソヒソと話す。玲璃の方は手慣れたもので、こちらを一瞥もすること無く自然な風を装って会話。授業中、どうしても授業を受けたくない時は寝るという選択肢を一貫してとっている成実はぎこちない。
 などと思っていれば昼休みが終わった。すぐに授業終了の挨拶をし、教師が出て行く。代わりに教室の中が俄に騒がしくなった。昼飯の時間だ、と誰もが散り散りに別れる。
 そんな中の一人である成実は、友達の元へ行こうとしていた玲璃の元へ恋人である草薙人志が近づいて行くのを見た。それとなく、彼等の会話に耳を傾ける。

「あぁ?何だよそれ、占いか?」
「そうそう。はい、ここに生年月日入れて」
「俺等って何年生まれだっけ?」

 学年を代表する有名なカップルが頭を突き合わせて一つの雑誌を囲んでいれば目立つのは自明の理。すぐに教室内の視線を集めるだけ集めた2人はしかし、2人きりの世界へ完全にワープしているのか気にしている様子は無かった。
 ――不意に人志が悲鳴を上げた。

「おいこれ、絶対当たらねぇだろ!俺達の相性、最ッ悪じゃねーか!!」
「そうだねぇ。ま、相性占いなんてそんなもんでしょ」

 じゃあ何故やらせたんだ。
 教室中の心が一つになった。