「あーあー、ねぇよ。何でこう――二人して吊られちまうのかねえ。アドレイドの奴はともかく、真白には生き残っててもらいたかったぜ。つーか寡黙吊りとかアホか。喋れよ、ホント」
寂しいぜ、と心にもない言葉を吐き出した。ところで、とラグは目の前に焦った様子も無いどころか無表情の男に視線を移す。
「それを私に言ってどうする?吊らないでくれと頼むつもりか?」
共有者の片割れ、トラヴィス。リンネの方はすでに噛み殺したので彼を今日、殺してしまえば共有者はどちらも死んでしまう事になる。村側は指導者を失う事になるはずなのだが、目の前の彼から焦りは感じられなかった。
それどころか冷静に現状をまとめ始める始末。彼を組織のトップとして据え置けばそれはそれは安心安全が確保出来そうだ。
「狂人は誤爆、か。それとも狼側を裏切ったのか――ともあれ、占い師の片方が狂人である事に間違いは無いようだ。ならば、わざわざ占い師を吊って吊り縄を減らす必要もあるまい。私は運が良かったようだ」
「今から噛み殺される奴の台詞だとは思えねぇな。何を企んでる?」
「もう企みは終えた。今日の占いは両占い師に指示を出している」
「まさか――」
「ああ。君が指定占い先だ。本物の占い師が黒を出せば全てが終わる。私の読みは間違っていなかった」
それは事実上の死刑宣告だった。驚きに目を見開いたラグはしばしの沈黙の後、首を横に振る。
「あぁ、そうかよ。が、今日の生贄はあんただ。それだけは変わらねぇ」
「好きにするといい。明日の結果も変わりはしない」
顔色一つ変えない村の指導者。
――どちらが人の皮を被った狼なのだろうか。
そんな考えがちらりと脳裏を過ぎった。
人狼陣営
・ラグ
・真白
・アドレイド