3日目

 集会所に集まるや否や、統率者であるトラヴィスが口を開いた。

「犠牲者はいなかった。だが、遠吠えが聞こえるな。人狼が全滅したわけではないらしい。狩人の功績だ」

 狩人と言うのは夜、1人だけ狼の襲撃から守る事が出来る存在だ。村人の中に1人だけ紛れているが、自身の身を護る事が出来ないので名乗り出てくれない方が良い。

「差し込み失礼。昨日はイリヤを占ったぞ。結果は村人だったぜ」
「ほう?占った理由を訊こう」
「イリスが噛み殺されて取り乱してたのが演技かと思ったからだ。悪かったな、疑って」

 イリヤがふん、と鼻を鳴らす。「あんたがそーゆー奴だって事は知ってた」、との事らしい。アルフレッドに続き、二人目の占い師であるサヴァナが結果を報告する。

「フレディは村人だった。占った理由は、昨日ずっとシンシアに役職説明してたからだ。露骨な言葉稼ぎに見えた」
「ひっでぇなあ。ま、俺は村人だけど」
「フレディ。お前のそういう軽率な発言と軽薄な行動は村人を騙る狂人だと思われやすいから気を付けてほしいね」

 ところで、と話を遮ったのはシンシアである。彼女は唯一村のルールを知らないちょっとお馬鹿な子なので話の重大性が色々分かっていないようだった。

「今日、誰も死ななかったっていうのは人狼がいなくなったからじゃなくて、狩人が頑張ったから?」
「おう、そうだぜ、シンシア」
「フレディ、私の事馬鹿にしてるでしょ」

 微笑ましいじゃれ合いを始める両名を無視、リンネが呟いた。

「霊能者は生きているのでしょうか?誰も名乗りでませんが――」
「霊能者は俺だ。アレンは――村人だった」
「ほう。お前か、ハーヴィー」

 ぎっ、とトラヴィスを睨み付けたハーヴィーはしかし、そうですと頷くだけに留まった。友人であるアレンが処刑された事を根に持っているようだったが、ここで共有者に食って掛かる程若くなかったのだ。
 それ以上、霊能者を名乗る者も現れない。つまり。

「霊能者はハーヴィー様、という事ですね。人狼が霊能者を騙る意味はあまり無いですし」

 さて、とトラヴィスが手を打った。静まり返る集会所。
 哀しい事だが、と口火を切ったが彼の表情は哀しさをまるで表していなかった。いつも通り。

「今日の処刑者を決めなければならない。だが、今日は指定投票としよう」
「狼を見つけたって事ですか、ボス?あたしはそれっぽい人なんて見掛けませんでしたけど」
「アドレイド・・・」

 人狼を捜す気が無さそうな人間堂々の1位を飾る彼女はやはり何の危機感も無さそうに問うた。ふん、とトラヴィスが鼻を鳴らす。

「今日の投票は真白だ。理由は一つ、話さないからだ。自己主張をすべき場で黙り込むは、黙秘の証し」

 視線を受けて真白が息を呑む。ディラスが形容し難い感情を孕んだ瞳を彼女へ向けた。

「・・・私を今日、処刑するということ?」
「ああ。疑わしきは罰する・・・私を赦す必要は無い」

 しばしの沈黙。
 ややあって、真白は深い溜息と共に頷いた。

「分かったわ。黙っていた私が悪いから。けれど、私を見捨てるのなら、絶対に勝って」

 ああ分かったよ、とそれが嘘でもそう言ったのはラグだった。気まずそうに視線を外している。ディラスだけが、集会所を出て行く真白をずっと見ていた。

初期人数:16
現在人数:13
・アルフレッド=ヴィンディア:占い師?
イリス:初日犠牲者
・イリヤ
・マゼンダ
・ディラス
真白:3日目処刑
・ラグ
・リンネ:共有者
・トラヴィス:共有者
アレン:2日目処刑
・ハーヴィー
・フレディ
・アドレイド
・エドウィン
・サヴァナ:占い師?
・シンシア