「――寒い・・・」
仕事が終わり、帰宅した真白はそう呟いた。室内は異様な冷気に包まれており、一瞬何が起きたのか分からなかった。
ただし、何が起きているかは別として元凶は誰なのか分かっている。
こんな事をやらかすのは、こちらへ来て2日しか経っていない彼――ディラス以外にはあり得なかった。
そう考えているうちに、リビングへ続くドアが開いた。どこか困惑したかのような顔をしたディラスが仁王立ちしている。
「遅かったな、真白」
「うん。それはいいのだけど、この寒さは?」
「お前に言われた通り、エアコンを使ったらこうなった」
ディラスが熱中症で死んでたら悪いと思い、エアコンの使い方を教えたのだ。と言っても『運転』ボタンを押せばいいと言っただけだが。
どうしたらこうなるのかと首を傾げつつもリモコンを確認。
設定温度――18度。
寒いに決まってる。
「次からは気を付けて」
「僕もお前の職場に行ってみるか」
「止めて。マネージャーが煩いから」
主に黄色い悲鳴を上げるであろう、彼女の事を考えると気が重くなるどころか鬱陶しい事態になるのは目に見えて明らかだった。