Quartetの3人組で焼き肉に行くとこうなる

 まだ焼けていない生肉、野菜、タレの入った器。
 それが机に並んでいる食べ物類の全てだった。焼けた網に乗せる順番を思案しているであろうベランジェの顔が恐い。と、ジェレミーはそっと視線をエクトルに向けた。ベラの隣に座る彼は呑気に欠伸などしている。

「あのさ、ベラ・・・肉、焼かねぇの?」
「焼く。が、もう少し網を温めるぞ。生モノはくっつくからな」
「あ、そう・・・」
「待ちきれねぇよ。野菜だけでも焼こうぜ。先にこっち食っちまえば問題無いだろ」

 言うが早いかエクトルが野菜を大量投入。ベランジェが苛立った目をエクトルに向けるが、彼はそれに気付かない。これだからこのメンバーで飯食いに行くのは嫌なんだ、とそっと溜息を吐いた。

「おっ。野菜うめー。お前等も食えよ。俺だけ野菜食ってたら腹膨れちまうだろうが」
「勝手な奴・・・!というかこれ、生だぞ!?」
「どうりでしゃきしゃきしてると思ったよ」
「マジかよエクトル・・・。もう少し焼くぜ、これ」

 生野菜を食わされた。不意に何を思ったのかベランジェが氷を網の上に乗せる。さすがのエクトルも疑問顔だ。

「ベラ?何やってんのさ」
「いや・・・氷が溶けるのを見るのは面白いなと思って」
「お前は唐突にそういう訳の分からない事をやりだすよな。あ、カボチャうめぇ」
「食ってばっかじゃん、エクトル!って、あああ!爪楊枝落とした!!」

 勢い余って使っていた爪楊枝を網に落とした。それは網目をすり抜けて炭に突っ込む。燃えるんじゃないかとハラハラしたものの、火事になるには火力も燃料も不足していたので大事にはいたらない。

「線香くらいには燃えているな」
「消すか。一応」

 エクトルが息を吹きかけた。舞い上がる炭。まだ肉も食べていないのにすでに疲れている。