「っらぁぁああぁぁぁ!!」
「うおっ!?」
後ろからいきなり奇声が聞こえた。驚いて振り返ったオズウェルはそこに彼女の姿を見つけて思わず溜息を吐く。不敵に笑う顔は整っていて美しいが、こう見えて不良の片割れとして学園中に名前を知らしめている問題児――セレスティア。
「どうした」
「どうした、じゃないだろ。今日はハロウィンじゃないか。あたしにも菓子寄越せ」
「ハロウィン・・・ああ・・・大分過ぎている気がするが」
「あたしにとっては今がハロウィンなんだよ」
「強引な奴だ」
困ったな、とオズウェルは溜息を吐いた。勿論、ハロウィンなどとっくに過ぎ去っているので菓子など携帯していない。仕方なく持っていないと白状する。
「ならお仕置きだな!」
「悪戯だろう・・・」
「ああ、それさね!丁度アイリスの奴が新しい魔法の実験台が欲しいつってたな」
「アイリス・・・?ああ、フェリクスの・・・」
聞いた事のある名前だと思えば、クラスメイトのあの陽気な彼の親友。正直、フェリクスという生徒は悪い人物ではないのだが――そう、たまにとても獣じみた執着だとか行動だとかが見え隠れして一対一で話すのがどことなく苦手な印象がある。
対してアイリスはと言えば、どこをどう切り取っても普通の生徒。他者との違いを挙げるとすれば、フェリクスとまともな会話が出来る事だろう。
「魔法の実験、か。危険そうだな、却下だ」
「じゃあ、エヴァン先生の新薬の研究に一役買うってのはどうだ?」
「あの人はそんな事までやっているのか」
「知らね」
「死にそうだから辞退する」
――というか、悪戯ってこんなものだったか?命の危険が伴う悪戯って何なんだ。
ここに来てようやくそんな疑問が脳裏を掠めた。しかし、当のセレスティアは夢中になって悪戯の内容を考えているし、その姿が何だか可愛いので一時は眺めておこうと決意。