世界の端

トラヴィス&シンシア


 どうしてこんな事になったのか。考えるだけ無駄というものだが、そう思わずにはいられなかった。
 ちらりとシンシアは隣で黙々と新聞を読むNo.1――トラヴィスへ視線を向ける。ここは宿の一室だが、何と驚く事に彼と同室である。頼むから勘弁してもらいたいものだが、生憎とフレディは別の仕事でいない。

「・・・退屈か?」
「えっ!?いや、別に・・・」

 唐突に声を掛けられた事で我に返る。そうすると何を考えているのか分からない瞳と目が合った。途端、走る悪寒。
 何か言わなければならない、と思ったシンシアは挙動不審に辺りを見回した。本人は動揺をひた隠しているつもりだったが第三者が見ればそれは一目瞭然である。

「その、甘い物が食べたい、なぁ、と・・・思いましてます、はい」
「そうか」

 す、と左拳を向けられた。殴られるのかと本気で焦ったが何の事は無い、あっさり手を出せと言われたので従う。差し出した右手の平に何か小さな物が乗った。

「飴だ!」

 イチゴ味。
 いったいどうじてボスはこんな甘ったるい食べ物を持っているのだろうか。などと考え始めて開かれたままのシンシアの手の平にもう一つ、今度は琥珀色のそれが乗せられる。べっこう飴だ。

「・・・・・」

 言いたい事は色々ある。あるが――とりあえず、トラヴィスがいったいどこに飴を隠し持っていたのか、そしてどうして飴を常に携帯しているのか。この2点を探る事が今後の課題だなと貰った飴を口の中に放り込んだ。
 ――びっくりする程甘かった。


Q:何故飴を持っているんですか?
A:ブドウ糖は1日に(略)脳の疲れを取り、働きを活性化(略)飴が好きだから。